糖尿病の診断や治療の評価には、様々な検査が行われます。ここでは、主要な血糖関連の検査項目について、わかりやすくご説明します。
糖尿病関連の主な検査項目
1. 血糖値
血糖値は、血液中のブドウ糖の濃度を示す値です。食事をすると血糖値は上がりますが、健康な体ではインスリンというホルモンが分泌されて血糖値を適切な範囲に保ちます。
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空腹時血糖値: 10時間以上食事を摂らずに測定した血糖値です。糖尿病の診断基準の一つとなります。
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随時血糖値: 食事の時間に関係なく測定した血糖値です。
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食後血糖値: 食事開始から1~2時間後に測定した血糖値です。食後の血糖値が高い場合も糖尿病の疑いがあります。
2. 75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)
糖尿病の診断を確定するために行われる精密検査です。
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検査方法: まず空腹時に採血し、その後、ブドウ糖75gを溶かした水を飲みます。その後、30分後、60分後、120分後に再度採血を行い、血糖値とインスリンの分泌量を測定します。
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わかること: 体がブドウ糖をどのように処理しているか、インスリンの分泌能力や効き具合を詳しく評価できます。空腹時血糖値だけでは分からない「隠れ糖尿病」や「糖尿病予備群」の発見に役立ちます。
3. HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)
HbA1cは、過去1~2ヶ月間の血糖値の平均的な状態を示す重要な指標です。
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特徴: 採血時の血糖値が良くても、過去の血糖コントロールが悪ければHbA1cは高くなります。赤血球の中にあるヘモグロビンというタンパク質が、血液中の糖と結合した割合を示します。一度結合すると約4ヶ月間は離れないため、過去の血糖状態を反映します。
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わかること: 糖尿病の診断基準の一つであり、糖尿病の患者様にとっては治療の目標値にもなります。数値が高いほど、血糖コントロールが不良であったことを意味し、合併症のリスクが高まります。
4. グリコアルブミン(GA)
グリコアルブミンは、過去約2週間間の血糖値の平均的な状態を示す指標です。
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特徴: 血液中のアルブミンというタンパク質が糖と結合した割合を示します。HbA1cよりも短い期間の血糖変動を反映するため、HbA1cが高い場合に治療を始めてから、短期間での血糖改善度を評価するのに適しています。
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わかること: 比較的最近の血糖コントロールの状態を把握できます。HbA1cが測定しにくい溶血性貧血の方などにも有用です。妊娠中に貧血になりやすい方にも有用です。
5. 1,5-AG(イチゴー・エージー)
1,5-AGは、過去数日間の血糖値の変動、特に食後の高血糖の状態を示す指標です。
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特徴: 血液中の1,5-AGという物質は、血糖値が正常範囲内であれば腎臓で再吸収されますが、血糖値が高くなると尿中に排出されて減少します。
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わかること: 食後の高血糖の有無や程度を鋭敏に反映します。食後高血糖は、HbA1cだけでは見逃されやすい糖尿病合併症のリスク因子であり、1,5-AGが低い場合は食後高血糖が疑われます。
6. 尿糖(にょうとう)
尿糖は、尿中に糖が排出されているかどうかを調べる検査です。
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特徴: 通常、血糖値が低いときには尿中に糖はほとんど出ません。しかし、血糖値が非常に高くなると、腎臓がブドウ糖をすべて再吸収しきれなくなり、尿中に糖が排出されるようになります。
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わかること: 採尿時の血糖値が高いことを示唆します。あくまでその時点での血糖値の指標であり、糖尿病の診断や血糖コントロールの評価には、上記のような血液検査がより重要になります。
これらの検査を通じて、医師は患者様の血糖状態を多角的に評価し、適切な診断や治療計画を立てます。検査結果についてご不明な点があれば、お気軽にご質問ください。